漫画家まどの一哉ブログ
「化鳥・三尺角」 泉鏡花
読書
「化鳥・三尺角」泉鏡花 作
鏡花の小説は出来事の叙述と会話でできあがっていて、舞台を見るようなわかりやすさがある。文章の美しさは言うまでもないが、セリフも地の文も口調にリズムがあって、目の前で客を相手にしているような感覚だ。飽きさせないように次々に拍子を変えてくる、歌を聴いているような心地よさ。とくにセリフがリアルでありながら躍動していて、くりかえし味わいたい。
「あれ、また何をぢやアありませんよ。盗人を捕へてみれば我が児なりか、内の御新造様のいい人は、お目にかかるとお前様だもの。驚くぢあアありませんか。え、千ちゃん、まあ何でも可いから、お前様ひとつなんとかいつて、内の御新造様を返して下さい。ーー」「否(や)、実際山を歩行いたんだ。それ、日曜さ、昨日は_源助、お前は自ずから得て居る。私は本と首引きだが、本草が好物でな、知ってる通り。で、昨日些と山を奥まで入ったーー」
「化鳥・三尺角」泉鏡花 作
鏡花の小説は出来事の叙述と会話でできあがっていて、舞台を見るようなわかりやすさがある。文章の美しさは言うまでもないが、セリフも地の文も口調にリズムがあって、目の前で客を相手にしているような感覚だ。飽きさせないように次々に拍子を変えてくる、歌を聴いているような心地よさ。とくにセリフがリアルでありながら躍動していて、くりかえし味わいたい。
「あれ、また何をぢやアありませんよ。盗人を捕へてみれば我が児なりか、内の御新造様のいい人は、お目にかかるとお前様だもの。驚くぢあアありませんか。え、千ちゃん、まあ何でも可いから、お前様ひとつなんとかいつて、内の御新造様を返して下さい。ーー」「否(や)、実際山を歩行いたんだ。それ、日曜さ、昨日は_源助、お前は自ずから得て居る。私は本と首引きだが、本草が好物でな、知ってる通り。で、昨日些と山を奥まで入ったーー」
怪奇・幻想短編集。身の不幸にさらされる男女の念が不思議を成す。なかでも「朱日記」が傑作。迷った山中で見た赤合羽の大坊主と赤い猿の群れ、これが大火の予兆。そして大風の日に現れて町を大火に陥れる女の亡霊。少年の命を助ける赤い茱萸(ぐみ)の実など、目も眩むようなイメージが容赦なく炸裂する珠玉の幻想譚。
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