漫画家まどの一哉ブログ
「修繕屋マルゴ」 フジュレ・ド・モンブロン
読書
「修繕屋マルゴ」フジュレ・ド・モンブロン 作
(幻戯書房ルリユール叢書)
辛辣なパロディで世間を敵に回して生きた作家モンブロンの艶笑小説2編と旅行記を収録。18世紀フランス文学。
思ったより全編艶笑文学で、読み進むうち、なぜ自分はこんなものを読んでいるのか不思議な気になる。
表題作「修繕屋マルゴ」は恵まれた容姿を武器に、貧窮する身の上から娼婦としてのし上がっていく女性の物語。大枚を払ってでも彼女をものにしようと言い寄ってくる男たちのいかにバカで情けない連中かを歯に衣着せぬ毒舌でこきおろす。しかし高級役人や聖職者にこの手合いが多いのは、ことさら説明されなくとも容易に理解できて意外でもない話。
それなら短編の「深紅のソファー」の方がふざけていて面白い。姿をソファに変えられた男という設定は元ネタがあるらしいが、彼(ソファー)の上で性行為が繰り返され、行為が男性の不発に終わると人間の姿に戻るのが愉快。
作者モンブロンは時代に先んじて合理的な思考の持ち主で、身分や階層による権威を否定しているうえ、宗教的習慣も非合理な迷信として顧みない。なかなか18世紀のフランスでは生きにくい性格だっただろうと思う。
「コスモポリット」はさばさばした旅行記で、あっという間にヨーロッパあちこちを巡ってしまうが、これは作者が逮捕を恐れて逃げ回っている境遇であったせいでもあるらしい。たいへんだね。
PR