漫画家まどの一哉ブログ
「アーサー王宮廷のヤンキー」 マーク・トウェイン
読書
「アーサー王宮廷のヤンキー」
マーク・トウェイン 作
(角川文庫)
アメリカはコネチカット州生まれの男がふと目をさますと、そこは1300年前のイギリス、アーサー王の宮廷だった。科学の知識を駆使して偉大なる魔法使いとして活躍。民主的で平等な社会への変革を目指すが…。
孤軍奮闘、時代にはるか先んじてイギリスに産業革命を仕掛ける。石鹸工場を立ち上げて、広告と営業を開始。発電設備を整え、電線を引き電話を設置。印刷を始めて新聞を創刊。ほとんどナンセンスに近いほどの現代文明の再現。なにせ円卓の騎士ランスロットらが、自転車で駆けつけるのだから笑ってしまう。
この時代の身分制度と意識は頑然たるもので、身分の違いは人間と猿の如く生まれ持って全く違う生物の如きもの。城に住む者は平民の命などあろうがなかろうが全く省みない。主人公はこの状況に果敢に挑戦し、貴族や騎士のばかげた特権を廃止して、ゆくゆくは共和制を打ち立てようとする。そして最も警戒するのは教会であり、最終的には教会の支配との戦いとなる。
それにしてもアーサー王は身分的偏見からは逃れられないが、勇猛で理解早く揺るがない男。主人公とともに農民に身をやつして世界を見聞するところ以降死刑寸前まで、胸躍る冒険小説の醍醐味が味わえる。
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