漫画家まどの一哉ブログ
「ヴァレンシュタイン」 シラー
読書
「ヴァレンシュタイン」シラー 作
(岩波文庫)
三十年戦争時代。ボヘミアの傭兵隊長ヴァレンシュタインの反乱と死を描く戯曲三部作。誰からも慕われる英雄であったはずの彼が、いかにして皇帝への反旗を翻し暗殺される運命となったか。
第一部を読んだ限りでは、シェイクスピア劇を発展させるにしては人間描写が単に役割的で物足りなかったが、第二部・第三部と物語が動き出すにつれて描く人物がいよいよその性格を露わにし、俄然面白くなってきた。
架空の人物マクス青年は、実に純粋な邪心なき人物で、大人たちの間で板挟みとなって苦しむ役どころだが、その恋人ヴァレンシュタインの娘テークラも自分たちの置かれた困難な状況に覚悟して臨む意志の強い女性である。この2人の性格と悲恋はいかにも劇作上の必要とはいえ効果的だ。
彼ら以外の大人たちははっきり言えば裏の裏をかこうとするような権謀術数のなかで揺れ動く人間で、ヴァレンシュタインが知らないうちに一人一人皇帝側に寝返っていくところが辛い。また数々の戦果を挙げたヴァレンシュタインが今や占星術の虜となっていて、あやしい占い師に頼っているなど、彼の運命がなだれを打って破滅へと向かうことを象徴しているようだ。
ドラマとしてはオーソドックスなものかもしれないが、それだけに十分楽しめた。
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