漫画家まどの一哉ブログ
「さらわれて」 R.L.スティーブンソン
読書
「さらわれて」R.L.スティーブンソン 作
(平凡社ライブラリー)
遺産を相続するはずが奸計にかかって船にさらわれた青年。船は難破し、上陸後も荒野から山中へと苦難の道のりが続く。18世紀スコットランドを舞台とした屈指の冒険小説。
恥ずかしながら英国史、スコットランド史を知らないのはもちろんなのだが、この作品の背景には名誉革命以降の反革命運動があり、ジャコバイトと呼ばれたその勢力の反乱と地下活動がある。
そしてスコットランド高地地方がイングランド合同後も基本的に合同には消極的で、カトリックであり現地語であるゲール語を使い、ケルト音楽を愛する土地柄であることが、この物語のスリリングな逃避行を成立させている。
というわけで主人公青年デイビットは、なんの因果かジャコバイトの闘士アランと延々高地地方を身を隠しながら移動し、低地の都市エジンバラを目指す。物語後半はそんな内容で確かに面白いのだが、個人的には前半の海洋冒険シーンのほうがワクワクとした。冒頭怪しすぎる叔父の陰謀。その叔父に騙されて乗せられてしまった2本マスト船とそのスタッフ面々。裏表ある不可解な人格の船長。侠気ある元医者。暴力的な水夫長。デイビット&アラン対全船員の戦い。挙げ句の果ての座礁・難破など。お決まりかもしれないが海洋冒険小説はいつでもロマンたっぷりなのだ。
PR