漫画家まどの一哉ブログ
「渡辺てる子の放浪記」 林 克明
読書
「渡辺てる子の放浪記」林 克明 著
(同時代社)
れいわ新選組から衆議院選に立候補した氏の苦闘の人生を振り返り、その人柄と取り組みを紹介する。著者は私の薄い知り合い。
ホームレスやシングルマザーを経て、派遣労働の過酷さを身にしみて体験した渡辺てる子だが、なにより学生時代から始まった5年のホームレス生活があんまりな体験だ。政治活動により警察に追われている身の男性と付き合い出奔、そして潜伏。家も借りられない状態で各地を転々とし、なんと妊娠・出産。小さな子を抱えた親子4人のホームレス生活なんて、ふつう考えられないが実話だ。若くて世間知らずといえばそうかもしれないが、これが大人としての人生のスタートだからただごとではない。
そしてこの相手の男性の経歴自体が大いなる虚構であり、男性失踪後シングルマザーの道を歩むが、そこからの派遣・低賃金労働の残酷さは今更ながらである。様々な人に支えられながら生きてきた道のりが語られる。
後半はついにれいわ新選組の一員となって活動することになった氏の講演から、近頃の自己責任・弱者嫌悪の社会についてその問題点が語られる。これはまったくそのとおりだが、この辺りは著作物の限界で、氏の人間的魅力は実際に講演を聞いてみなければわからないだろう。私も聞いたことはない。
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