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「十六の夢の物語」 ミロラド・パヴィッチ

読書
「十六の夢の物語」ミロラド・パヴィッチ 作
(松籟社)

セルビアの過去から現代を自在に行き来して、まさに夢の中を彷徨う真正幻想文学。珠玉のアンソロジー。

著者がセルビア古典文学の研究家で大部の文学史を上梓しているだけあって、古代や中世の設定などで物語が始まる。舞台はベオグラードや、ボスニア・ヘルツェゴビナ、サラエヴォ。多く登場するギリシャ正教や東方協会などの修道士。それだけでかなりエキゾチックな印象があり非日常の感覚を味わうことができる。ストーリーも直線的でなく簡単に時空を飛び越えたりするので、なにか掴みきれないうちに夢の中に置き去りにされたような読後感がある。以下、少し紹介。

「アクセアノシラス」:修道院の7つの扉。それぞれ鍵番がいて歴代の王の秘密を守っている。扉の中に迷い込んで永遠に彷徨い続ける王たち。王の残した詩作は書いても読んでもいけない。ある修道士はこの作品の現代語訳を命令されるが…。

「ドゥブロヴニクの晩餐」:17世紀初頭、ある修道僧は密かに蜜蝋を使って全世帯の合鍵を作り、他人の家を覗き見することによって魔女の使いを発見する。縛られた魔女の報復は333年後、退却したドイツ軍が岩山に残していった動力車の巨大な車輪によってなされる。

「ワルシャワの街角」:絵画に描かれた楽譜を読み解くことに情熱を傾けた父。多くの譜面を残したが、ただひとつ解読できない絵があった。後年、娘は不思議にも過去に育った実家とそっくりの家を発見するが、その家は左右が逆転していた。そして例の解読できなかった絵画が…。

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