漫画家まどの一哉ブログ
「不良少年とキリスト」 坂口安吾
読書
「不良少年とキリスト」坂口安吾 著
(新潮文庫)
個性的な文学者も社会評論となると凡百の床屋政談の域を出ないことがしばしばあるが、さすがに安吾は一歩越えていた。権力には盲目的に服従する日本人の気質が、中世のままでぜんぜん変わっていない指摘など、戦後70年以上たった今でも相変わらずの中世国家なので頷くしかない。浦上の切支丹でさえ三合の米に音を上げたのに、戦時下の国民はわずか二合一尺の配給米の欠配に耐えたという皮肉も愉快。
織田作や太宰との座談があって期待したが、当時の文士間の共有事項がわからなければ、ほぼ雑談のようなものだ。
表題作「不良少年とキリスト」は死んだ太宰について書いたものだが、バンカラに砕けた筆致が冴えて面白い。「太宰は、M.Cマイ・コメジアンを自称しながら、どうしても、コメジアンになりきることが、できなかった。」「『父』だの『桜桃』だの、苦しいよ。あれを人に見せちゃア、いけないんだ。あれはフツカヨイの中で処理してしまわなければいけない性質のものだ。」やはり太宰はこれだな。
「人間性(虚無は人間性の付属品だ)は永遠不変のものであり、人間一般のものであるが、個人というものは、五十年しか生きられない人間で、その点で、唯一の特別な人間であり、人間一般と違う。思想とは、この個人に属するもので、だから、生き、又、亡びるものである。」ここは前後の文脈もあるがかなりいいかも!
「不良少年とキリスト」坂口安吾 著
(新潮文庫)
個性的な文学者も社会評論となると凡百の床屋政談の域を出ないことがしばしばあるが、さすがに安吾は一歩越えていた。権力には盲目的に服従する日本人の気質が、中世のままでぜんぜん変わっていない指摘など、戦後70年以上たった今でも相変わらずの中世国家なので頷くしかない。浦上の切支丹でさえ三合の米に音を上げたのに、戦時下の国民はわずか二合一尺の配給米の欠配に耐えたという皮肉も愉快。
織田作や太宰との座談があって期待したが、当時の文士間の共有事項がわからなければ、ほぼ雑談のようなものだ。
表題作「不良少年とキリスト」は死んだ太宰について書いたものだが、バンカラに砕けた筆致が冴えて面白い。「太宰は、M.Cマイ・コメジアンを自称しながら、どうしても、コメジアンになりきることが、できなかった。」「『父』だの『桜桃』だの、苦しいよ。あれを人に見せちゃア、いけないんだ。あれはフツカヨイの中で処理してしまわなければいけない性質のものだ。」やはり太宰はこれだな。
「人間性(虚無は人間性の付属品だ)は永遠不変のものであり、人間一般のものであるが、個人というものは、五十年しか生きられない人間で、その点で、唯一の特別な人間であり、人間一般と違う。思想とは、この個人に属するもので、だから、生き、又、亡びるものである。」ここは前後の文脈もあるがかなりいいかも!
PR
COMMENT