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漫画家まどの一哉ブログ

   
「デミアン」 ヘルマン・ヘッセ

読書
「デミアン」ヘルマン・ヘッセ 作
(新潮文庫)

ストリーウス少年を後悔と苦悩から救い人生の導き手となる友人デミアン。
やがて青春のところどころに現れるデミアンが体現する理想の生き方とはなにか。

物語の大半は精神的な考察で埋められていて、主人公ストリーウスのクリスチャンとして堕落したり立ち直ったりが描かれる。空想上の理想の女性ベアトリーチェを思うことによる落ち着きや、神的なものと悪魔的なものを結合する「アプラクサス」なる神を見つけたりする。

結局最終的に得る結論が、「自分以外のものに振り回されずに、自分自身に忠実に自分が行くべき道を行き、自分がなすべきことをやれ。」ということだが、それではあまりにあたりまえな気がする。それだけ自分以外のものを理由に生きていることが多いということだろうか。

私自身は自己流で生きるしか方法はなく、他を省みる余裕もないので、この辺りは今ひとつ胸にストンと落ちるものではない。茫漠とした印象だ。
この結論を導くデミアンの母エヴァ夫人の家に集まっている連中も、修行者や占星術師や菜食主義者や道を探求する人々ばかりで、言い方は悪いがカルトのような、道に迷った未熟な人間の巣窟ではないか(偏見)。これではシンクレールに「話していることが古本くさい」と言い放たれた宗教家志望の友人ピストーリウスとどう違うのか。多角的に文献を渉猟しているピストーリウスのほうがまだ好感が持てる。カインのしるしを持つものという条件はイメージ以外になにをさしているのか、読み込めなかった。

このエヴァ夫人とデミアン、シンクレールのラストあたりのやりとりは既に神秘的な領域に入っていて、彼らの生き方のバックボーンが信用できない。また戦争は自然現象ではなく人間の愚行だということに至っていない。

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