漫画家まどの一哉ブログ
「かきつばた・無心状」
読書
「かきつばた・無心状」
井伏鱒二
つげ義春が愛読書にあげていた井伏鱒二。以前自分はもうひとつ馴染めなかったのだが、近ごろはがぜん気に入っている。この文庫版短編集は身辺雑記のような日常の小事件を描いたものが多いが、けっしてエッセイではなく小説としての面白さに満ちている。文体のなめらかさにあるのだろうか、大事件でなくてもワクワクする。それだけ精密に人間を見ているし、その見方が自分の趣味に合うのだろう。
「爺さん婆さん」:まさにつげ作品の如し。田舎の鉱泉にいってみると、そこは混浴で年寄りばかりが湯治に来ている。みんな足腰が立たないから動くのがたいへんだ。しかも口だけは達者な入れ墨入の婆さんがいてこいつが愉快。
「おんなごころ」:かの太宰治はじゃじゃ馬にてんで頭の上がらない男で、死の前までの太宰の暮らしぶりを振り返った小説。またその女とは正反対の太宰がひそかに憧れていた女も登場。太宰に関しては想像通りでまったく違和感なし。
「乗合自動車」:戦時中から戦後にかけて走っていた木炭バス。これがすぐエンストするのだが、そんな時は再びエンジンがかかるまで乗客みんなで延々バスを押さねばならない。乗車賃を払っているのになんとも納得いかないはなしだが、運転手はえらそうにしている。しかも短気。
「かきつばた・無心状」
井伏鱒二
つげ義春が愛読書にあげていた井伏鱒二。以前自分はもうひとつ馴染めなかったのだが、近ごろはがぜん気に入っている。この文庫版短編集は身辺雑記のような日常の小事件を描いたものが多いが、けっしてエッセイではなく小説としての面白さに満ちている。文体のなめらかさにあるのだろうか、大事件でなくてもワクワクする。それだけ精密に人間を見ているし、その見方が自分の趣味に合うのだろう。
「爺さん婆さん」:まさにつげ作品の如し。田舎の鉱泉にいってみると、そこは混浴で年寄りばかりが湯治に来ている。みんな足腰が立たないから動くのがたいへんだ。しかも口だけは達者な入れ墨入の婆さんがいてこいつが愉快。
「おんなごころ」:かの太宰治はじゃじゃ馬にてんで頭の上がらない男で、死の前までの太宰の暮らしぶりを振り返った小説。またその女とは正反対の太宰がひそかに憧れていた女も登場。太宰に関しては想像通りでまったく違和感なし。
「乗合自動車」:戦時中から戦後にかけて走っていた木炭バス。これがすぐエンストするのだが、そんな時は再びエンジンがかかるまで乗客みんなで延々バスを押さねばならない。乗車賃を払っているのになんとも納得いかないはなしだが、運転手はえらそうにしている。しかも短気。
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