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漫画家まどの一哉ブログ

   
「仮面の陰に」あるいは女の力 ルイザ・メイ・オルコット

読書
「仮面の陰に」あるいは女の力
ルイザ・メイ・オルコット 作
(幻戯書房ルリユール叢書)

名門コヴェントリー家に新たに雇われた家庭教師ジーン・ミュア。彼女は身分・本心を偽りながら成り上がろうとするしたたかな女だった。「若草物語」の作者オルコットが男性名義で書いた煽情小説。

物語のはじめにこの新任家庭教師が野心を抱いたただならぬ女であることが読者には明かされてしまうので、そのあとは彼女の誠実な言動ひとつひとつが実は底意を含んだ演技であることを知りながら読み進むことになる。涙や笑顔も実は周到に準備された芝居なのだ。果たしてなにを企んでいるのかという疑念である。

実に巧みに一家の一人一人がたらし込まれていくわけだが、その悪計を破綻させるある証拠が密かに積み上げられており、最後に彼女がそれをどう乗り切って悪事(この家の乗っ取り)を成功させるのかが山場だ。悪が敗北するかもしれないが、こうなったらこの悪女を応援したくなる気持ちもある。実際世間には頭の回転が早く様々な能力に秀でていながら、倫理観だけは欠落している人間がいるから、ピカレスクはおもしろいのである。

「若草物語」は未読だがこちらの煽情小説はスリリングなエンターテイメントだった。煽情小説というと現代ではなにか性的な興奮を煽るものという意味に誤解されそうだ。ふつうにエンターテイメント小説といえばいいのではないか。煽情小説と言っても下品なところもなければ無駄に大げさな表現もなく、セリフも人間の心理を巧みに演出してあり、充分に古典名作文学だ。

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