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漫画家まどの一哉ブログ

   
「魔の山」 トーマス・マン
読書
「魔の山」トーマス・マン 作

世界名作文学。主人公の青年が山地のサナトリウム(結核療養所)で過ごすうちに、次第に成長してゆく様を描く教養小説。ということだが、この教養小説という分野があるとすれば、自分は青年というものを特別愛さないのであまり興味を持てない。
ましてこの主人公は頭は悪くないが、いたって凡庸な男で、加えて無類のおしゃべりであり、黙っていればいいのにというような時に無駄に観念的で追従的な言葉遊びを披露する輩だ。どうにも好感が持てない。

この青年が療養施設でいろんな人間に出会うが、精神的な深みのない人間なので恋のくだりなども全く面白くない。やや面白いのは人文主義者で自由と民主主義に絶対の信頼を置くヒューマニストのイタリア人文筆家で、彼が青年に滔々と教え諭す理念は読み応えはある。
またそのライバルとなる暴力革命によるキリスト教社会主義を礼賛するイエズス会教徒の男は明らかにダークサイドに魂を売っていて、よくぞこんな人物を造形したなと感心する。

しかし総じて納得がいかないのは、小説の中で直接思想信条を語りまくる書き方だ。革命期の社会を舞台にして大きなドラマが動き、その中でいろんな階層の登場人物がそれぞれの立場を表明するならわかる。そうやってより物語も濃密になるから。
ところがこの作品の場合、療養所や散歩道の途中などで座ったままいきなり社会思想の論戦が開始されるので、読者である我々がなぜその話を聞かなければならないか必然がない。これならなんでもアリではないか。

その他、雪山スキーで遭難しかけたり、心霊実験で霊魂を呼び出したり、多少エピソードも盛り付けてあるが、なんでもアリのちぐはぐ感を抱いた。作者は執筆に長い時間をかけ過ぎたと思う。

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