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漫画家まどの一哉ブログ

   
「風音」

読書

「風音」 目取真 俊 作

 

沖縄文学。森に囲まれ河口に面して連なる断崖。その一部平らになったところは古来より伝わる風葬場だった。戦後石の階段が取り外され、今では昼顔の蔓草を伝って崖をよじ上っていくしかたどり着けない場所だ。その崖の上ではかつての特攻隊員の頭蓋骨が虚しく空を見上げ、風が吹くたび泣くような音を立てるのだった。子どもたちは勇気を試す為にここを訪れ、大人たちは沖縄戦を象徴するものとして、この頭蓋骨をルポ番組にしようとしている。敗戦間際、なぜここに特攻隊員の死体があったか。そのいきさつを知る男とその家族の過去と現在を巡るおはなし。

小説としては伝統的な文学の王道を行く構成で、落ち着いて読める。

 

芥川賞受賞作の「水滴」は男の片足が異常に肥大して足先から水を噴き出し、夜な夜な喉を涸らした戦死者の亡霊がその水を飲みにくるという、いささかグロテスクなはなしで、ちょっと構造が出来過ぎている気がして、わたしは「風音」のほうが素直に読めた。

 

「風音」にしても「水滴」にしてもテーマ小説のように、沖縄と戦争の問題が書かれるが、作者は1960年生まれなので、当然実体験ではなく考えて仕組んだ小説であり、ここらへんを素直に受け取れるか、リアルを感じないかは読む側にある。

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