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「銀座復興」 水上滝太郎

「銀座復興」
水上滝太郎 作
(岩波文庫)

関東大震災後焼け野原となった銀座。瓦礫と残骸の中、他に先んじて店を開けたバラック小屋の飲み屋と、そこに集う男たちの交遊と悲喜こもごも。他に震災にまつわる好短編を収録。

滝太郎は作家であるとともに有名企業重役でもある人で、ふだんの活動領域が丸の内から銀座周辺なのか、ビジネスマンの暮らしと視点が垣間見える。とうぜんこの頃はまだ新宿・渋谷など山手線西側や中央線の発達もサブカルの隆盛もなく、経済も文化もこの界隈が中心だ。

表題作「銀座復興」は近隣のサラリーマンや銀座の老舗主人などが登場して、飲み屋での会話で綴る人間味豊かな話。併録の「九月一日」も由比ヶ浜の別荘に集う人々の震災体験であり、舞台となる社会階層に貧困の様子がない。作者は慶応閥「三田文学」の人だからもちろんだが、日本の経済・文化は多くこれらの人々によって牽引されてきたのだろう。(読んでいる私に縁がないだけ…)
読んでみると作者滝太郎は人間が誠実で、ひねくれたところがなく、作家としては反自然主義であるせいか個人の鬱屈や自己憐憫などに拘泥するところがない。その辺は素直な世界で気持ちよく読めた。

「遺産」:憎まれ者の高利貸しの残した遺産は、近隣の家々との交わりを断つための異様に高い塀。この塀が震災で崩れたため一時的に隣人とのふれあいが生まれるがその行方は…?
類を見ない珍しい設定で面白かった。

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