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「老いるということ」黒井千次
読書
「老いるということ」 黒井千次 著

古今東西の文学に描かれた「老い」をとりあげて考えたエッセイ集。ラジオ番組で毎回放送された内容に加筆したもの。


はじめに出てくる古代ローマの哲人キケローの「老いについて」は自分も読んでみたが、ここで説かれる老年の落ち着いて満ち足りた境地はあたりまえ過ぎておもしろくなかった。失われた若さに応じて欲を捨て、諦念に至るのを良しとされても、これでは大味すぎるハナシで、われわれ凡俗の身はもう少し具体的な様々の惑いがあるのが実際だ。


「ドライビング・ミス・デイジー」や「八月の鯨」なども自分は未鑑賞の作品だが、人生の紆余曲折を乗り越えた後の穏やかで幸福な老年だ。ある程度の生活費に余裕があって認知症にならない状態であれば、到達は可能かもしれない。


いちばん興味を持ったのが、耕治人の晩年の3部作「天井から降る哀しい音」「そうかもしれない」「どんなご縁で」で、長年作者を支えてくれた老妻の認知症が進んでいく暮らしを描いたもの。有名な作品らしいが自分は知らなかった。
芥川や太宰は若くして老いの物語を書いたが、彼らにとって老年とは確定した人生の最終結果であり到達点であった。また「楢山節考」に登場する老女おりんも、老年の最終形態を既に決定していて、山に捨てられることを望む。比べて耕治人が描いた現在の老年は、終わりの見えない現在進行形というかたちをとっており、この長く続く老いの生き様がやはりもっとも実感として納得できる。以上内容のまま。

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