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「江藤淳と大江健三郎」 小谷野敦
読書
「江藤淳と大江健三郎」小谷野敦 著
(ちくま文庫)

大江健三郎に圧倒的支持をささげる著者による江藤淳との抱き合わせ評伝。
大江健三郎はちょこちょこ読んできたけど、保守派論客の代表格であった江藤淳は読んだことがない。私もそうだが、小説を読むのは好きだが文壇の動きや人間関係についてまで興味はなく、作品が読めればそれで良いという人は多いだろう。この評伝は実に細かく念入りに二人の過去を追っているので、そのしつこさが面白いのかもしれない。

それにしてもこの二人が左右の論壇や社会的活動で大いに世間を賑わしていたのが、すでに今から30年も前のことで、二人がまだ50代半ばだったことに驚く。
三島由紀夫や武田泰淳、小島信夫、安岡章太郎、開高健、中上健次など戦後純文学がまだ力があった最後の時代で、やがて多くの作家が加齢とともに大西巨人のいうクリエイティブパワーを失い、単なる身辺雑記を寄せ集めた物を新作小説と銘打って発表し、仲間内で文芸賞を回しあっている様子がよくわかる。またさすがにアカデミックな世界なので、学閥や教授職の獲得が大問題であることも知った。いずれもまったくつまらない話なのだが、なぜかするすると読めてしまうのは、裏のないあけすけな著者の人格と話術によるのだろう。

最終章で大江の滅亡への性的興奮についてほんの少し触れられるがこれは発見だった。考えてみれば私の読んだ大江作品はみな背景に性的なイメージがあるが、それが破滅への興奮を含むというのが新鮮だった。

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