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「死刑囚最後の日」 ユゴー

「死刑囚最後の日」
ユゴー 作
(光文社古典新訳文庫・小倉孝誠 訳)

まもなく断頭台の露と消える自身の毎日を綴った日記体文学。揺れ動く心と残酷な運命を描いて死刑制度の廃止を訴える。

この語り手がどういう人間でどういう罪を犯したかを一切語らぬまま、いきなり牢内で執行の日を待っているところから始まるので、最初はなかなか気持ちが入らなかった。
それでも監禁場所が手筈順に移動され死刑執行の日がじりじりと迫ってくると、リアリティと切迫感は一段と増して目が離せなくなる。作者が体験したわけでもないのにこの迫真性はたいしたものだ。そしてラストはひとこと定められた執行時間が書かれるのみ。これが心憎い。

ユゴーが若い頃の作品でもあり、死刑制度に反対する正義感から書かれているので、テーマに沿ってただ一直線に書かれた印象。揺らぎがない。
以前読んだ岩波文庫版と違って、前書き的な戯曲「ある悲劇をめぐる喜劇」と「一八三二年の序文」も併載されているが、この「一八三二年の序文」などは全くストレートな死刑制度反対論であり文学的なものではない。まるで普通だ。

それにしてもこの時代から死刑制度に対する反対と賛成の趣旨内容は、現代に至るまで全く変わっていない。実に歴史の長い問題だ。カントが制度賛成派であるのは驚いた。

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