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漫画家まどの一哉ブログ

   
「死と乙女」 アリエル・ドルフマン

「死と乙女」
アリエル・ドルフマン 作
(岩波文庫・飯島みどり 訳)

ピノチェト独裁政権失脚後の不安定な政情の中、民主化を推し進める南米チリ。かつて自分を拷問した医師にめぐりあった女性パウリナのとった行動とは…。世界中で公演された傑作戯曲。

登場人物は3人のみの室内劇ながら息を呑む驚くべき展開。世界中に絶えることのない独裁政権が監禁した反対勢力者に対していかに非道な拷問を行うか。なかなか現代日本で暮らしていて身近に知ることはできないがこれが真実であろう。


またそれが平凡で善良な人間(この作品では医師)によってたやすく行われてしまうのも人間の真実である。

拷問・強姦を経て生き残ったパウリナの大胆な復讐劇が開始されるが、問題の医師はあくまでもしらを切り続け、民主化を目指す新政権で重要な役割を担う弁護士の夫はことを荒立てまいと必死。たしかにこの3人がいればこの舞台は充分出来上がる。起きていることはたったひとつだが実にスリリング。この緊張感がたまらない。

それにしても軍事独裁政権が倒れても、すっかり全部が民主化勢力と入れ替わるわけではい。旧政権側は単に少数派になっただけで議員は解任されたわけでもなく官僚たちも残っている。支持者勢力も温存されている。この条件で舵取りせねばならない民主化の難しさ。これが世界中で繰り返されてきたのだと気づいた。

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