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漫画家まどの一哉ブログ

   
「幽霊」 イーディス・ウォートン

「幽霊」
イーディス・ウォートン 作
(作品社/薗田美和子・山田晴子 訳)

お屋敷に起きる不思議な出来事。微かに姿を見せる儚き幽霊。全編幽霊譚7篇。

ほとんどの短編で舞台は土地の名士のお屋敷であり、現れる幽霊はほんの微かに姿を見せる程度。誰それの幽霊がいるんじゃないかという体で話が始まって、その存在がますます疑えなくなったところで終わってしまう。事態が解決されることはない。

怪異の存在を感じることができる人に向けて描かれた怪奇小説。しかし作者が意図したような恐ろしさはあまりなく、心静かに読むことができた。文体に詩的表現やことさら耽美的な味わいもない。古いお屋敷ならではの不気味さも少なくてあっさりしている。作者は当時(1900年代前半)の社会批判を含んだ現代小説で人気を得ていた人で、幽霊譚とはいえ筆致は変わらなかったようだ。

「カーフォル」:噂の屋敷を訪問した者が数匹の犬の亡霊に見つめられたまま帰ってくる。かつてその屋敷では妻を軟禁状態に束縛した夫が、妻の可愛がる犬を次々に虐殺していたのだった。
「柘榴の種」:愛する夫の元へ時々届く灰色の封筒。夫はその手紙を見ると悲壮な面持ちで部屋に閉じこもってしまう。微かな筆跡でほとんど読み取れないそれは、亡くなった前妻からのものだった。
「ホルバインにならって」:かつて社交界の寵児であった男も今や老いた。ふとした思い違いからあるはずのないパーティへ出かけ、要介護状態となっても毎夜自宅で晩餐会を開いているつもりの婦人の元へ迷い込む。二人で華やかなパーティーの幻を見て一夜を過ごす面白くも悲しい異色傑作。





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