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「ルイブニコフ二等大尉」 クプリーン短篇集
読書
「ルイブニコフ二等大尉」クプリーン短篇集
(群像社)

1900年代初頭に活躍したロシア人作家。生活者への徹底した観察と実体験が生み出す慈しみ溢れる物語。

解説によると作者クプーリンはエネルギッシュで荒々しい性格。ジャーナリストの仕事に大いに健筆をふるった作家で、内省的なタイプではなく、市井の人々の只中に飛び込み、実際に多くの仕事を体験して丁寧に伝える作風。人物や風景描写が言葉豊かでみずみずしく、たっぷりの情感が味わえる。

「ルイブニコフ二等大尉」:大手新聞の人気コラムニストは、のんきで気のいいルイブニコフ二等大尉の東洋人的な顔立ちを見ただけで、日本人のスパイであることを確信するのだが、それがあまりにも大雑把な判断で二流記者ぶりが現れていておもしろい。

「サーカスにて」:主人公のプロレスラーが病を得て、熱や目まいにうなされる時の感覚が手を替え品を替え描かれる。ベッドが揺れだしたり、天井が遠のいたり近づいたり、夢の中で花崗岩の塊を剥がしては積み上げ、実際に息が吸えなくなって死を覚悟するなど、自由自在な筆力を感じる。

「ざくろ石の腕輪」:長年にわたって手紙を送りつけるストーカーであるが、最後に明らかになったその男はほんとうにピュアな恋心を抱いて死んでいった悪意なき人物だった。という美談仕立てだが、遠くから女を理想化して眺めているだけが美しい恋だろうか?実際生活をともにして汚い面も見て幻滅もした上で、築きあげていく方が本当の恋愛ではなかろうか。

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