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漫画家まどの一哉ブログ

   
「モルヒネ」

読書
「モルヒネ」 ミハイル A. ブルガーコフ
 作


ブルガーコフは短く書き散らしたものでも、メモのようなルポでも、なんでも面白い。短い中にも変化があって、セリフも多様で飽きない。この短編集は、白軍が敗退し、まさにソビエト連邦が立ち上がろうとしている混乱の時期を生きた彼の全人生が背景となっている。地方勤務医としてスタートし、就職したソビエト政治人民委員会政治啓蒙機関文学部門(リト)解散に至る頃までの苦難の経験の数々。作者が見たものは社会の矛盾や人間の卑小なあり方。それがつねに風刺の対象となっているのです。


「話す犬」:長編「犬の心臓」でも人語を操る犬が出てくるが、ブルガーコフはこのモチーフが好きなようだ。サーカスの舞台に登場した話す犬に驚いて高値で買い取るが、残念ながらだまされているのだった。


「ある医師の異常な体験」:ブルガーコフは基本的に反革命軍の軍医だったわけだが、戦乱の中で身分が保障されるわけではなく、その時の勢力に従いながらあちらこちらへ放浪する。藁を積んだ二輪馬車に揺られながら、北カフカス・チェチェン地方を行く話。


「カフスに書いたメモ」:作者はモスクワで職を得るため、リト(政治人民委員会政治啓蒙機関文学部門)に応募して書記として採用される。これが事務所に2人しかいない状態で、職を得るのが早い者勝ちなのがヘンだ。あとからも数人詩人が応募して定員となるが、はたして給料はちゃんと出るのか?まるでいいかげんなソビエト黎明期。


表題作「モルヒネ」は以前別の訳で読んだが、本人の中毒体験をもとにした痛々しい話で、やっぱり名作だ。



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