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漫画家まどの一哉ブログ

   
「マスク」 菊池寛
読書
「マスク」菊池寛 作
(文春文庫)

100年前、スペイン風の猛威に怯える作家と世の中を描いた表題作ほか、コロナ禍の現代に問う死と病の短編集。

菊池寛も少しは読んでいたが、あらためて読んでみて面白さに感服した。まさに短編の名手。世間をよく見ていて、書斎の中にいない人だ。時代物の設定でも、のっぴきならない人の世をしみじみと感じる。

「神の如く弱し」:去勢だけは張るが、裏切られても理不尽な目にあっても始めから負けている立場で、けして相手を責めない優しすぎる男。人のことは笑えない…。
「簡単な死去」:ふだん社内で孤立しているため、突然の病死にも哀悼してもらえない孤独な男。親戚つきあいもなく通夜も嫌われている。こんな人間もじつはたくさんいる。
「忠直卿行状記」:これは代表作。つねにちやほやと特別扱いされて育ち、対等な人間の交わりを経験できない若殿様のそれゆえの乱行を描く。世に暴君と言われる者は多いが、自覚のあるなしにせよ実はこのタイプかもしれない。
「仇討禁止令」:大義のためとはいえ、実は自分が父親を討った犯人であることを隠しながら、その子供達と親しく過ごさねばならない。共感性羞恥のある自分にはこの種の設定は読み進めるのが辛かった。
「私の日常道徳」:誰に対しても公平で対等、親しさによる相応の距離の取り方など。人間を肩書きや損得抜きで見ているからこそ、これら短編が書けるのがよくわかる。

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