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「プールサイド小景・静物」 庄野潤三

読書
「プールサイド小景・静物」庄野潤三 作
(新潮文庫)

平凡な日常風景を静かに描いて、不安と崩壊の兆しを感じるリアリズム小説。

若い頃にこの文庫本を読んだ記憶では、ごく身近な日常を丁寧に描いて美しく心に迫る作風というものだったが、今読むとかなり違った印象だ。
この記憶は巻末の「静物」から来ているのだと思うが、たしかにこの日常風景は名作の筆致というものだろう。しかしただ静かな平和的な印象かといえば、逆になにか差し迫った緊迫したものを感じてしまう。それが何かは分からないが…。

「舞踏」や「プールサイド小景」などは明らかに家庭の危機を描いていて、夫の身勝手やだらしなさによって、妻の人生は暗澹たるものになっていくのだが、若い時の読書ではこの現実味はよくわかっていなかった。今読むと露骨に破滅へ向かう有様がリアルだ。著者が男性であるためか男が情けなく、夫のために狂わされる妻の悲しい心情に思い至る。

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