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「ノートル=ダム・ド・パリ(下)」 ユゴー

「ノートル=ダム・ド・パリ(下)」
ユゴー
(岩波文庫 辻 昶・松下和則 訳)

魔女として追われる身となった無実のエスメラルダ。彼女を救い出したカジモド。ノートルダム大聖堂を舞台とした騒乱の行方は!?

司教補佐クロード・フロロは聖職者でありながらエスメラルダに一方的な愛を寄せるが、彼女が嫌がって強く拒絶しているのにもかかわらず、相手の心情を全く顧みない。自分の苦悩と絶望を滔々と語り憐れみを要求するなんともエゴイスティックなものである。しかも彼女の容姿ばかりに惚れ込んでいて人格全体を愛そうとしているわけでは無論ないのだ。しかしこんな男はざらにいることを作者は意図して書いている。

カジモドがエスメラルダをかくまい、大聖堂へ宿なし組の大群が押し寄せる決戦の大舞台となったとろで、章立ては突然バスチーユ城砦奥の間でのルイ11世の決算報告書裁定の場面となり、これが不必要に長い。要は宿なし組の討伐を決定するのが目的だが物語のバランスで言うとここまでルイ11世を描かねばならないのか疑問だ。

しかし実はこれもユゴーが現代流のエンターテイメント作家ではないことの現れかもしれない。いよいよエスメラルダが縛り首にされようとし、カジモドが大聖堂からそれを発見する時点で、ふつうに読者サービスするならば危機一髪の劇的クライマックスを期待するところ。しかしユゴーはあくまでリアリズムを貫きご都合主義的な快感を追わない。それまで運命的な母と子の別れと出会いまで演出しておきながら、このラストの非情なさりげなさはなんだろうか。しかしこれは我々が現代劇のお約束に慣れ過ぎているだけで、ほんとうはこれでいいのかもしれない。

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