漫画家まどの一哉ブログ
「サラゴサ手稿」上 ヤン・ポトツキ
「サラゴサ手稿」上
ヤン・ポトツキ 作
(岩波文庫・畑 浩一郎 訳)
騎士道精神溢れる衛兵アルフォンソが、スペイン山中で出会った奇々怪界の物語。カバラ学者や絞首刑囚たちに出会い数々の物語を聞く。
読み始めるやいなや引き込まれてしまった。物語の設定であるこの手稿を残したアルフォンソなる人物はあまりに騎士道を重んじる頑なな人間。彼が頑固ゆえに悪霊や犯罪者に心を許すことなく事態は進展してしまう。絢爛豪華な城の中でムーア人の美姉妹と楽しんでいたのは幻だったのか。虚実の合間を行き来する面白さ。
ところが様々な人物が現れ、彼らがみなそれぞれの物語を語るようになると、一代の盗賊の活躍するあれこれや、薄幸の美女の悲恋物語など必ずしも怪奇幻想ではないものがほとんどとなる。それなりに面白いものの、なぜこの作品を読み始めたのか個人的な動機は満たされなかったのが残念だった。新たな語り手の物語中の人物がまた語り手となる複雑な構成。
PR

