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「グッド・バイ」

読書

「グッド・バイ」 太宰治 作(新潮文庫)

 

太宰の小説は名人の落語を聞いているように心地よく読める。「人間失格」によれば太宰は少年の頃より道化を演じることで社会をくぐり抜けてきたそうだが、自分の読後感ではどれを読んでもその本質は変わっていない。悲惨な内容でもユーモラスな語り口で楽しい。もちろん根本的に太宰が苦悩を背負った人間だとは理解するが、人前に出すものは必ず道化的技術によって加工されていて、ここが苦悩を苦悩らしく出されるよりも自分の趣味に合う。そもそも葛西善蔵や嘉村礒多のような苦闘する私小説にしても、それが作品足り得ているのは必ず料理人としての技術があるからで、苦悩だけではちっとも面白くないはずだ。

 

たとえば「饗応夫人」など、主人公の未亡人は来客を断ることができず、常にもてなしに奔走して病に伏してしまうのだが、この主人公を憐れむよりもその極端な気弱な人格が愉快でコントを観るようだ。太宰はダメな自分のしでかすことや、身の回りで起きる困難をつぎつぎと繰り出してくるが、必ず第三者の目で見て茶化している。それがドタバタ劇を見るようで、あれあれこんなにダメなことを繰り返すよ!といったおかしさがあるのだ。

 

ところでスラスラと読まされてしまうのはおそらく会話やセリフの妙だね。「冬の花火」「春の枯葉」など、あまり笑いもない戯曲で、しかも敗戦後日本の相変わらずの前近代的な問題点を登場人物がべらべらと喋るのだが、まったく鼻につかず、しかも真実味を帯びているのはここにこそ技術があるというもんだ。

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