忍者ブログ

漫画家まどの一哉ブログ

   
「きりぎりす」 太宰治
読書
「きりぎりす」太宰治 作
(新潮文庫)

私小説から女性告白体まで、著者中期の多彩な方法で書かれた傑作短編を収録。

これこれ。私がかなり以前に読んで、その面白さにセリフまで覚えた新潮文庫の短編集。
太宰といえば一般的には苦悩に満ちた私小説作家で、その自身を追い詰めるような赤裸々な表現が愛されまた嫌われている印象があるが、私はあまりそういう読後感を持たない。といっても新潮文庫で有名なものを5~6冊読んだくらいであるが、私小説と言ってもきちんと推敲され意図的に書かれているし、しっかり演出・構成されたものなので十分に楽しむことができる。自分を卑下し大げさに嘆き苦しむとしても腕がいる。客(読者)に出すわけだから、採れたてそのままのように見えても料理人の技術がなければ成り立たない。

このストーリーテラー・語り部としての才能はこの短編集にも存分に生かされていて、私小説スタイルのものはユーモラスな身辺雑記・旅行記などであり、自身を離れた設定のものは見事な物語で極上の味わいがある。「皮膚と心」「水仙」「きりぎりす」など名品と思う。

「皮膚と心」:女性告白体の逸品。「こんなところに、グリグリができてえ」というセリフが好き。作中登場する図案工は資生堂のマークなどを手がけた山名文夫をモデルとしているようだが、なぜこんな下町のアンチャンみたいな口調なのだろう?

「水仙」「きりぎりす」:どちらも絵描き設定で天才と凡人の問題を極端な例を作って表現。ヒヤリとするものがある。売れて堕落するか、売れないで破滅するか…。

拍手[0回]

PR
  
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 13
14 15 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
フリーエリア

「世の終りのためのお伽噺」
アックスストア
「洞窟ゲーム」
アックスストア 西遊
「西遊」
amazon ヨドバシ.com
アックス75号
アックスストア

祭り前

秘密諜報家
最新コメント
[08/13 筒井ヒロミ]
[02/24 おんちみどり]
[05/10 まどの]
[05/10 西野空男]
[01/19 斎藤潤一郎]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
madonokazuya
性別:
非公開
自己紹介:
漫画家
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
カウンター
カウンター
フリーエリア
Copyright ©  -- まどの一哉 「絵空事ノート」 --  All Rights Reserved

Design by CriCri / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]