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「怪奇小説集 共犯者」 遠藤周作

読書
「怪奇小説集 共犯者」遠藤周作 作
(角川文庫)

中間小説も多く手掛けた遠藤周作のミステリー短編集。

元となった70年の講談社本刊行時から「怪奇小説集」と題されているが、もとより幻想味はまるでなくミステリーですらない。やや暗い影を帯びたショートストーリーといった風味。通俗小説といえばそうだが、さすがに表現は抑制されていて読んでいて嫌な感じはしない。そのせいで殺伐とした内容でも読み進むことはできる。

「偽作」:小説修行に励むことを結婚の条件とする女性と再婚し、やがて彼女は賞を受賞して有名作家に…。しかしその影には常に叔父と称する人物の影が…。はたして作品を書いたのは誰か…。二転三転するラスト。この作品がもっともミステリー感あり。

「人喰い虎」:インドで日本領事館に属官として勤める男。日本からの代議士連を接待するがどうもうまくいかない。インドの自然や人間性を愛する彼は、現地人を馬鹿にしている役人や代議士たちの間で苦闘する。俗物たちに囲まれてもがく彼が、退治される虎に重ね合わされている。佳作。

「憑かれた人」:素人でありながら吉利支丹文献発掘に取り憑かれて泥沼にはまり込む人は多い。古書店主のそんな心配をよそに世紀の大発見に取り憑かれた男の最期は?作者自家薬籠中の吉利支丹もの。こんな料理の仕方があるとは。

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