漫画家まどの一哉ブログ
「ほら吹き男爵の冒険」 ビュルガー
読書
「ほら吹き男爵の冒険」ビュルガー 作
(光文社古典新訳文庫)
実在の人物ミュンヒハウゼン男爵の体験記が大きく膨らみ、荒唐無稽な冒険譚として広がったもの。ドイツの作家ビュルガーが加筆・翻案。
18世紀後期の作品だが、今からみるとユーモアのセンスも違うし、だいたい話が荒唐無稽すぎてリアリズムのかけらもないものを現代のわれわれが楽しめるわけがないのでは?と予想するところだが、豈図らんやこれが楽しく読めてしまった。
とんでもない怪力やスタミナをもって、海中から月世界までわたり歩き、クマもワニもライオンもものともしない。いくらホラ話とはいえそこまでやってはシラけるのでは?というレベルを最初から最後まで貫き通すので、かえって圧巻である。
もちろん直接笑いにつながる内容ではないが、このスタイルで現代まで生き残っているのも、ユーモア小説のひとつの在り方かもしれない。読者の緊張を緩和した状態にするという効果においてひとつのジャンルなのだ。
文庫本にはふんだんに挿絵が掲載されていて、漫画として申し分ない出来栄えだと感心していたが、描き手はドレだった。
PR