漫画家まどの一哉ブログ
「天使の蝶」 プリーモ・レーヴィ
読書
「天使の蝶」プリーモ・レーヴィ 作
(光文社古典新訳文庫)
化学者としての知見を活かし、奇想天外な発明品の数々がもたらす悲喜劇を描いたSF的短編集。
NATCA社が開発する画期的な新発明・新商品を抱えて、今日もまた馴染みの営業マン、シンプソンが現れる。詩歌作成機、三次元複写機、美の測定装置、その他とんでもない発明品のあれこれ。昆虫とのコミュニケーションを発展させて雇用関係を結ぶなど、アイデアは尽きない。
このシリーズの他、痛みを快感に変えてしまう薬剤の悲劇や、冷蔵庫で眠りつ続け、誕生日にのみ喝采されて起こされる美女の話など、すべては現代文明への巧みなアイロニーとなっている。
人生や内面に届くような描写はないが、単純な落とし噺とは一味違う展開があり、いわゆるショートショート的な読み物以上のおもしろさ。
作者プリーモ・レーヴィはアウシュビッツからの生還者として知られる作家で、その方面の著作も多数。実は私の書棚にも「これが人間かーアウシュヴィッツは終わらない」があるのだが、なんとなく文体に馴染めなくて読み進まないままになっているのだった。
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