漫画家まどの一哉ブログ
「ヘンリー四世」全二部 シェイクスピア
読書
「ヘンリー四世」全二部
シェイクスピア 作
(ちくま文庫)
ヘンリー四世の治世下、反旗を翻す熱血漢ホットスパー。対する放蕩息子のハル王子と友人の俗物フォルスタック。個性豊かな人物を中心に展開する人間味豊かな歴史ドラマ。
貴族階級に属しながら安酒場を飲み歩く肥満漢フォルスタック。戦闘には全く向かない減らず口の凡人だが、実際貴族といってもこういった人物はごくふつうにいっぱいいただろう。
そしてハル王子ハル王子は最高級の身分でありながらフォルスタックと一緒に放蕩を続けるといったキャラクター設定も、その落差がおもしろく、この作品がこの種の設定の嚆矢かもしれない。
かたや敵対するヒーロー、ホットスパーはまさに煮え滾る性格で、剣をとっては勇士だが、自身の激情をコントロールすることができない。これもハル王子と対立的な性格設定となっている。
内戦という国の行方を決する一大事でありながら、飲み屋の女将や娼婦も登場し、伯爵や大司教といった面々も深刻な顔をして大論を叫んでいるわけでもない。みな迷い苦しみオロオロする人間的な感情を豊かに持った人物ばかりだ。いわゆる大河ドラマ的ではない面白さ。
ヘンリー四世の出世や、その王子達の振舞いを見ると、平気で裏切れる人間が最後には勝つといったところが、権力闘争の真実か。
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