漫画家まどの一哉ブログ
魯迅と「阿Q」その他
読書(mixi過去日記)
魯迅と「阿Q」その他
魯迅というと「阿正伝」が有名だが、他にも種類の違った短篇を書いていて、けっこうおもしろい。たとえば「孔乙己」という作品に出てくる落ちぶれたインテリや、「故郷」に登場する困窮した農民の友人などは、ボクの好きな人物だ。まったく偉くなくて、おとなしい人間。細々と情けなく生きている。
「阿Q正伝」にしても、主人公阿Qは負ける一方だがケンカもする、けっこうアッパーな男だが、思慮は浅く、その日暮らしでいいかげんな人間だ。また和を持って尊しとしないトラブルメイカーでもある。こんな人間はいつの時代にもいるのが愉快だ。
魯迅を評するに当時の中国の時代背景や、魯迅の民族に対する問題提議をもってするのは、まあ常だろうが、小説自体はそんな状況とは無縁にとても楽しく読めるもので、阿Qの住む街にも金持ちや貧乏人がうようよと、それこそリアルに描かれていて痛快だった。
これが当時列強の支配下に置かれようとしていた中華民族特有の社会であるとはとても思えない。おそらくいずれの世の中だって、強い者と弱い者がいて欲望に正直に生きているかぎり、こんなものだろう。ボクはそれがおもしろい。
「眉間尺」という一編は、首が飛んで喰らい合う復讐劇で、圧倒的な幻想文学だ。こんな作品も書くのか。菅野修の「剣」という作品と似ていた。
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