漫画家まどの一哉ブログ
「防雪林・不在地主」 小林多喜二
「防雪林・不在地主」
小林多喜二 作
(岩波文庫)
二重三重にも搾取され不作にあえぐ小作農たち。地主階級との闘争は都市労働者とも連対して大きなうねりとなってゆく「不在地主」。その下敷きとなった未発表作「防雪林」を併載。
「防雪林」の冒頭主人公源吉の母や妹、幼い弟たちの家の中での様子が実にいきいきとして魅力的で、また深夜に鮭の密漁に繰り出す情景などもその空気感まで伝わって来る。テーマ以前にこの冒頭だけで心躍る名品だ。
源吉が野生的な単独行動者で、組織的な運動による解決を選ばないが、そういうところもかえって良い。
この時代すでに札幌・小樽などは近代的大都会で、舞台である開拓された寒村とあまりの差に驚く。搾取されていることにも気付かない村人(小作人)の、地主様への精神的隷属はまるで現在の自民党信者と瓜二つ。
「不在地主」は未発表作「防雪林」に比べて確かにしっかりした階級的視点、プロレタリア文学作家としての積極性が感じられるが、反面小作争議の展開が図式的で説明くさいと言えば確かにそうかもしれない。ではつまらないかというとそんなことはなく、簡潔でサクサク進む面白さがあり運動が盛り上がっていく様は興奮して読んだ。
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