漫画家まどの一哉ブログ
「路地の子」 上原善広
読書
「路地の子」上原善広 著
(新潮文庫)
大阪府松原市。昭和まっただ中。被差別地域である路地から、包丁捌きの腕と才覚で食肉業界をのし上がった男のルポルタージュ。
私も大阪出身だが遠く離れた北河内なので、物語の舞台である松原市が屠畜業盛んな土地であることは全く知らなかった。ただ大阪で暮らしていると、被差別部落の噂はどこからともなく聞こえてくる。解放同盟vs共産党の確執も、解放同盟を批判するビラやチラシを目にしたことはあったと思うが、こういういきさつだったのか。このルポの中で少しだけ登場する怪物政治家上田卓三のポスターは日常的に目にした。私が一時的に努めた八尾の小新聞社の社長はよそ者だが、解放同盟の批判記事を書いて家を取り囲まれたそうだ。
不幸な生い立ちの人間が多い被差別地域で、社会のあり方自体に問題意識を抱き改革を目指す人間もいるが、主人公のように社会構造的視野というものがなく、自身の努力と才覚で成り上がろうとするタイプもいる。したがって共産党にも解放同盟にも属さない代わりに、ヤクザや占有屋などとも同じ距離で近づきになる。
したがってこのルポは被差別部落解放の戦いの歴史では全くなく、アウトローと政治の世界を生々しく描いたもので、時々はこういうものを読みたくなる。芸術性は不要だがうまさに気づかないうちに読んでしまう文章がよい。
昨今家畜泥棒の事件も耳にするが、なるほど牛をさばける職人が1人いれば、あっというまに商品として売ってしまえるものらしい。
「路地の子」上原善広 著
(新潮文庫)
大阪府松原市。昭和まっただ中。被差別地域である路地から、包丁捌きの腕と才覚で食肉業界をのし上がった男のルポルタージュ。
私も大阪出身だが遠く離れた北河内なので、物語の舞台である松原市が屠畜業盛んな土地であることは全く知らなかった。ただ大阪で暮らしていると、被差別部落の噂はどこからともなく聞こえてくる。解放同盟vs共産党の確執も、解放同盟を批判するビラやチラシを目にしたことはあったと思うが、こういういきさつだったのか。このルポの中で少しだけ登場する怪物政治家上田卓三のポスターは日常的に目にした。私が一時的に努めた八尾の小新聞社の社長はよそ者だが、解放同盟の批判記事を書いて家を取り囲まれたそうだ。
不幸な生い立ちの人間が多い被差別地域で、社会のあり方自体に問題意識を抱き改革を目指す人間もいるが、主人公のように社会構造的視野というものがなく、自身の努力と才覚で成り上がろうとするタイプもいる。したがって共産党にも解放同盟にも属さない代わりに、ヤクザや占有屋などとも同じ距離で近づきになる。
したがってこのルポは被差別部落解放の戦いの歴史では全くなく、アウトローと政治の世界を生々しく描いたもので、時々はこういうものを読みたくなる。芸術性は不要だがうまさに気づかないうちに読んでしまう文章がよい。
昨今家畜泥棒の事件も耳にするが、なるほど牛をさばける職人が1人いれば、あっというまに商品として売ってしまえるものらしい。
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