漫画家まどの一哉ブログ
「薬指の標本」 小川洋子
「薬指の標本」
小川洋子 作
(新潮文庫)
思い出の品以外にも音楽や頬の傷まで、あらゆるものを試験管内に沈める謎の標本家。独り言を言うための小部屋を持ち運んで旅をする母と息子。幻想譚2編
「薬指の標本」:基本的な設定は充分ミステリーでありながら、事件と謎解きの快楽へ向かうわけではなく、謎めいた雰囲気を漂わせたまま終わる。古い4階建ての建物やしだいに体の一部と化す靴など、醸し出される不思議な空気感。怪しげな標本家のとりことなってしまう彼女。など神秘的な風味が味わえる。
「六角形の小部屋」:なんだか告解室のようだが、独り言でもあえて用意された場所で喋ると精神衛生上いいのかもしれない。登場する別れた元婚約者の男が真面目で優しいが諦めの悪い優柔不断な人間で、一転して嫌になる気持ちもわかる。
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