漫画家まどの一哉ブログ
「時間はなぜあるのか?」 平田聡/島田珠巳
「時間はなぜあるのか?」
平田聡/島田珠巳 著
(ミネルヴァ書房)
霊長類学と言語学の知見を集めて時間認識の謎に迫る。野心的で楽しい共同研究。
時間の研究となると哲学や物理学の立場から描く、時間全体の大きな話になりがちだけど、言語学やチンパンジーの研究など一見専門外の各分野からのアプローチが案外核心に迫るかもしれない。
チンパンジーはじめ動物は今を中心としたごく狭い範囲の時間感覚しか持っていないのではないか?という仮説を検証するため様々な実験が行われる。成長したライオンが子供の頃世話してくれた人間に久しぶりに会って喜んでいるシーンなどネット内で見ると、動物にも人間と同じ時間感覚があるのが当然と思ってしまう。
言語によっては現在より等距離であれば過去も未来も同じ言葉を使う場合もあり、また「まえ」「さき」など過去にも未来にも使われるようになった言葉の経緯などがおもしろい。
「時間とは動きや状態の変化を捉えるための変数である」という結論は、先に読んだ話題書、カルロ・ロヴェッリ「時間は存在しない」と共通する視点があって興味深い。宇宙を流れる大きな一つの時間といったものはなく、出来事の連鎖を人間が時間と感じてしまう。といった内容だったか。
しかし物理学的には時間は空間と一体となった時空間として存在しているらしく、これはまた別の話なのか整合性がとれるのか、誰か考えてくれるとありがたい。
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