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漫画家まどの一哉ブログ

   
「職業欄はエスパー」
読書(mixi過去日記より)
「職業欄はエスパー」
森達也
 著

日本を代表する(世間を騒がせた?)3人の超能力者たち。その日常を追ってテレビドキュメンタリーを仕上げるまでの、数年間を描いたルポルタージュ。

筆者森達也は、超能力を信じる信じないについては、あくまでニュートラルな立場で、超常現象そのものを持ち上げる姿勢はとらない。社会派ルポであり、筆者の視点は孤立する超能力者達の悲哀と、かれらをめぐる世間とマスコミの硬直した姿勢への疑問にある。それは、オカルトと称する詐欺まがいの社会悪を糾弾せねばならないという、あまりにも単純な正義の側に立った二分法であり、オウム事件以降のメディアが牽引する、過剰な正義感への嫌悪である。

はじめから超能力自体をまったくの詐欺行為とするなら別だが、ボク自身はそういう社会正義とは切り離して、事実ならば現時点で科学的説明がつかなくても、事実として肯定する。人間の意志(イメージ)だけで、スプーンが折れ曲がってちぎれたとしても、そこにトリックの余地がないならばそれが現実だ。
否定派の教授などは、超能力が科学を全否定しているようにいうが、これは否定のためのレトリックだと思う。森達也も書いているように、スプーンが曲がることがどうしてニュートン力学や相対性理論を排除することにつながるのだろう?あらたな科学的課題ととらえればよいではないか。科学で解明できていないことだってゴマンとあるのだから。

ボクの偏見だが、一般に学者という者は専門領域のみに詳しい人種であって、自分の専門でもって全ての現象にコメントしているように思う。精神医学や脳科学で幻覚を説明できれば、全ての心霊現象はそれだということになり、物理学で否定できれば全ての超能力はトリックだということにされる。
これは乱暴なハナシで、個々の事例にあたってみて、この場合はこういう脳内現象、こういうトリックと完璧に証明していかなければ解明したことにならない。超常現象の95%は錯覚・あるいは意図的なインチキだったとしても、5%なんとも言えない現象が残れば、素直に今後の研究を待てばよいと思う。これはオカルト商法を糾弾することとは別のことだから。

残念ながら超能力者は、社会の正義感により存在をゆるされていないようで、読んでいて途中、殺伐とした気持ちになった。森達也の描きたかったことも、そのナマの姿にあるのだから仕方がない。それでも読了すると社会の一端に触れた満足感は得られた。

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