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漫画家まどの一哉ブログ

   
「緋文字」 ホーソーン
読書
「緋文字」ホーソーン 作
(光文社古典新訳文庫)

はずかしながら名作として名高い本作を初めて読んだ。
訳者(小川高義)の腕なのか、上品で読みやすく素直に心に馴染んで気持ちが良い。わかりやすいがれっきとした大人の文章。

果たして少女パールの父親は誰であるか。おもな人物は4人くらいしか出てこないのですぐに見当がつくのだが、それにしては中盤かなり引っぱる。
ストーリー自体はそんなに変化のあるものではないが、たった4人の心の動きを丁寧に書き込んでいるので読まされてしまう。おそらく人物造形がうまくいっていて、とくに悪役の老医師チリングワースが魅力的だ。
少女パールもただ純真でストレートというのではなく、他の子供達から排斥されることによって人間社会でのしたたかさを身につけながら育っているように見える。これは母親へスターの気丈さを見ているからではないだろうか。
それに比べて若き牧師ディムズデールは秘事を働いたばかりに、7年もの間ただただ自分を責め衰弱しているようでは、本人は理由がわかっているのだから勇気や覚悟がないと言わざるをえない。これでは頭脳明晰ながらひねくれているチリングワースの復讐にあえばひとたまりもないだろう。

一直線のようなストーリーだが中身は濃く、悲劇的な最後も違和感はなかった。

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