漫画家まどの一哉ブログ
「犬と負け犬」 ジョン・ファンテ
読書
「犬と負け犬」ジョン・ファンテ 作
(未知谷)
成人した3男1女を持つ脚本家の主人公と妻。ある雨の日どこからきたのか1匹の汚れた大きな秋田犬がやってきて住み着くようになる。このバカ犬をめぐる子供達の巣立ちと夫婦の物語。
はじめてファンテを読んだが息をつがせぬ面白さ。ごく日常的な世界なのに静かではなく、ちょっとしたくすぐりのような演出が連続して退屈しない。バカ犬を転がし役としてまるでコメディのような事態が頻出するが、当事者にとっては笑い事ではないのだ。
子供達も親の思いとはうらはらなダメ人間として描かれる。大学をやめたり徴兵から逃げたり、長女は家に男を連れ込んで同棲し、長男は黒人と結婚する(母親にとってはありえないハナシ)。努力とか克己とかいうことがなく全員低きに流れていくが、そうかといってことさら反社会的なわけでもない。警察沙汰にならないだけマシだ。この平凡さがこの話が身近に感じられる所以で読んでいて気持ちが良い。とは言っても皆がだらだらしていられるのは家にまだ金があるからで、この前提が違うと成り行きはまったく変わってしまうだろう。
それにしても子供とは言っても、成人した人間が親の理想とは懸け離れたかたちで巣立って家を出て行くのは当然のことで、この両親がそこに話し合いがないことに絶望的な思いでいるのは親の勝手な思い込みであると思う。
「犬と負け犬」ジョン・ファンテ 作
(未知谷)
成人した3男1女を持つ脚本家の主人公と妻。ある雨の日どこからきたのか1匹の汚れた大きな秋田犬がやってきて住み着くようになる。このバカ犬をめぐる子供達の巣立ちと夫婦の物語。
はじめてファンテを読んだが息をつがせぬ面白さ。ごく日常的な世界なのに静かではなく、ちょっとしたくすぐりのような演出が連続して退屈しない。バカ犬を転がし役としてまるでコメディのような事態が頻出するが、当事者にとっては笑い事ではないのだ。
子供達も親の思いとはうらはらなダメ人間として描かれる。大学をやめたり徴兵から逃げたり、長女は家に男を連れ込んで同棲し、長男は黒人と結婚する(母親にとってはありえないハナシ)。努力とか克己とかいうことがなく全員低きに流れていくが、そうかといってことさら反社会的なわけでもない。警察沙汰にならないだけマシだ。この平凡さがこの話が身近に感じられる所以で読んでいて気持ちが良い。とは言っても皆がだらだらしていられるのは家にまだ金があるからで、この前提が違うと成り行きはまったく変わってしまうだろう。
それにしても子供とは言っても、成人した人間が親の理想とは懸け離れたかたちで巣立って家を出て行くのは当然のことで、この両親がそこに話し合いがないことに絶望的な思いでいるのは親の勝手な思い込みであると思う。
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