漫画家まどの一哉ブログ
「歴史への感情旅行」 安岡章太郎
読書
「歴史への感情旅行」安岡章太郎 著
またも読んでしまった安岡章太郎のエッセイ集。1995年刊。
「事実と真実ー井伏鱒二『黒い雨』」:作者井伏鱒二によると代表作「黒い雨」は小説ではなく、いくつかの被曝日記や体験談をもとに構成されたドキュメントであるとのこと。たしかに基調となった閑間重松の被曝日記がそのまま活用されているにしても、この作品が高い評価を受けているのは、作者の目が原爆そのものより人間の罪業に向けられているからではないかとの考察。
「島崎藤村と『夜明け前』」:もっと古い時代の小説かと思っていたら「夜明け前」の連載開始は1929年だ。安岡曰く、この年に藤村が明治維新前後をふりかえるのは、我々(安岡)が昭和をふりかえるように、作者にとってうんと近い時代の感覚ではないか。ましてや木曽の山中。この作品の主人公は青山半蔵ではなく、地域の歴史そのものだろうという話。
「菊池寛と仇討」:仇討の話ばかりを集めた短編集「仇討新八景」より「下郎元右衛門」という作品を紹介。極貧生活の中で当主の仇を討とうという嫡男達。見捨てずに奉公を続ける元右衛門が悪事に揺らいでいくストーリーが解説されるが、これがあっと驚く面白さ。
『梨の花』ー記憶の作用:政治的関心のない安岡がどうして中野重治を愛読するようになったか。また裕福な農家出身で東大まで出た中野にとって左翼とはなんであったか。彼の資質に迫った講演録。
「歴史への感情旅行」安岡章太郎 著
またも読んでしまった安岡章太郎のエッセイ集。1995年刊。
「事実と真実ー井伏鱒二『黒い雨』」:作者井伏鱒二によると代表作「黒い雨」は小説ではなく、いくつかの被曝日記や体験談をもとに構成されたドキュメントであるとのこと。たしかに基調となった閑間重松の被曝日記がそのまま活用されているにしても、この作品が高い評価を受けているのは、作者の目が原爆そのものより人間の罪業に向けられているからではないかとの考察。
「島崎藤村と『夜明け前』」:もっと古い時代の小説かと思っていたら「夜明け前」の連載開始は1929年だ。安岡曰く、この年に藤村が明治維新前後をふりかえるのは、我々(安岡)が昭和をふりかえるように、作者にとってうんと近い時代の感覚ではないか。ましてや木曽の山中。この作品の主人公は青山半蔵ではなく、地域の歴史そのものだろうという話。
「菊池寛と仇討」:仇討の話ばかりを集めた短編集「仇討新八景」より「下郎元右衛門」という作品を紹介。極貧生活の中で当主の仇を討とうという嫡男達。見捨てずに奉公を続ける元右衛門が悪事に揺らいでいくストーリーが解説されるが、これがあっと驚く面白さ。
『梨の花』ー記憶の作用:政治的関心のない安岡がどうして中野重治を愛読するようになったか。また裕福な農家出身で東大まで出た中野にとって左翼とはなんであったか。彼の資質に迫った講演録。
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