漫画家まどの一哉ブログ
「月を見つけたチャウラ」 ピランデッロ
読書
「月を見つけたチャウラ」
ピランデッロ 作
さりげない日常などとは正反対の、ひとつひとつ斬新な着想と技巧によって構成された短編集。諧謔味はあるが風刺というものではなく、人生に対する哀感を含んだ奥深いユーモア。解説によるとウモリズモというジャンル名になるのだそうだが、このレベルでそれぞれ違ったアイディアのものを250編近く書いたというから驚く。私でもタイトルだけは知っている映画「カオス・シチリア物語」「旅路」などの原作でもある。
「自力で」:死ぬ方はラクだが残された者の葬儀全般の手間や費用を考えると、おいそれと自宅で死ぬわけにもいかない。そこで主人公が考えたのが、わざわざ墓地まで出向いて縁者の眠る墓の前で自殺するというものだった。
「笑う男」:寝ているあいだ無意識に笑っていると精神を病む妻から難詰されるのだが、本人は夢を見た記憶もなくまったく納得できない。苦難の日常から解放されるため夢の中で楽しい思いをしているのだろうと自分を慰めていた。ある日とうとう見た夢を覚えていたが、その内容のくだらなさときたら!人間がいやになる可笑しさ。
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