漫画家まどの一哉ブログ
「日月両世界旅行記」 シラノ・ド・ベルジュラック
読書
「日月両世界旅行記」
シラノ・ド・ベルジュラック 作
(岩波文庫)
奇想天外な科学的装置によりふわふわと天界へ。月世界と太陽の世界を巡る2編のユートピア小説。当時最先端の科学的知見や哲学的見解などを遠慮なく散りばめて構成。17世紀中期を奔放に生きたシラノ・ド・ベルジュラックだが35歳の若さで死んでいる。
月世界旅行記のほうはユートピア小説の基本形とも言える風刺小説で、キリスト教的権威が支配する不自由な世界を次々と批判していく。主人公は伝統的なクリスチャンの立場だが、それを論駁する無神論者の言うことの方が明らかに筋が通っていて、作者の真意がうかがわれる。
太陽旅行記は前半主人公が魔法使いとみなされ、追っ手からの逃走劇が繰り広げられる。この辺りは波乱万丈のエンターテイメントで楽しく読めるが、後半太陽世界にたどり着いてからは、やはり全方位の風刺小説である。なかでも鳥たちによる人間批判が秀逸で、「彼らは隷属を好む性向がきわめて強く、ひとに使えることができなくなることをおそれて互いに自分の自由を売り合っているのであります。このあわれな奴隷どもは、主人を失うことをおそれるあまり、何か思わぬことから自由な身になってはたいへんとばかりに、水の中、空気の中、火の中、地の下、いたるところに神をでっちあげるのであります。」まさに宗教の正体見たり。
「日月両世界旅行記」
シラノ・ド・ベルジュラック 作
(岩波文庫)
奇想天外な科学的装置によりふわふわと天界へ。月世界と太陽の世界を巡る2編のユートピア小説。当時最先端の科学的知見や哲学的見解などを遠慮なく散りばめて構成。17世紀中期を奔放に生きたシラノ・ド・ベルジュラックだが35歳の若さで死んでいる。
月世界旅行記のほうはユートピア小説の基本形とも言える風刺小説で、キリスト教的権威が支配する不自由な世界を次々と批判していく。主人公は伝統的なクリスチャンの立場だが、それを論駁する無神論者の言うことの方が明らかに筋が通っていて、作者の真意がうかがわれる。
太陽旅行記は前半主人公が魔法使いとみなされ、追っ手からの逃走劇が繰り広げられる。この辺りは波乱万丈のエンターテイメントで楽しく読めるが、後半太陽世界にたどり着いてからは、やはり全方位の風刺小説である。なかでも鳥たちによる人間批判が秀逸で、「彼らは隷属を好む性向がきわめて強く、ひとに使えることができなくなることをおそれて互いに自分の自由を売り合っているのであります。このあわれな奴隷どもは、主人を失うことをおそれるあまり、何か思わぬことから自由な身になってはたいへんとばかりに、水の中、空気の中、火の中、地の下、いたるところに神をでっちあげるのであります。」まさに宗教の正体見たり。
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