漫画家まどの一哉ブログ
「戦いの後の光景」 フアン・ゴイティソーロ
読書
「戦いの後の光景」フアン・ゴイティソーロ 作
(みすず書房 1996年)
移民で溢れかえるパリを愛し、少女との裸の交流を妄想する主人公。細かいエピソードがモザイク状に折り重なる奇作。
1982年、パリ郊外の町ではしだいに移民が溢れて、知らない文字や言葉が飛び交うようになり、従来からの住人はもはや少数の側になるかの勢い。そんな町で暮らす男は、引きこもる妻とは別居同然の毎日で、ハツカネズミをポケットに忍ばせながら公園に出かける。神父を名乗り幼い少女達と交流を重ね、いやらしい裸の写真を撮るためである。そして家ではひたすら少女に裸身を責められる妄想を綴っているのだ。
全体像はごく短いエピソードを切れ切れに章立てした構成の間から立ち上がってきてわかるのだが、直接関係のない話題も挟まれており入り組んでいる。
それがわかりづらくて苦痛かというとそうではなくて、この自由な書きっぷりを追うのがだんだん楽しくなってくるから不思議だ。少数民族解放運動の地下組織とのあらぬつながりを疑われたりもして、面白く仕上げてある。
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