漫画家まどの一哉ブログ
「崩れゆく絆」 アチェベ
読書
「崩れゆく絆」 アチェベ 作
「崩れゆく絆」 アチェベ 作
現代アフリカ文学の古典。
ふだん小説を読むときは、登場する人々の暮らしを読む側もある程度共有しているものだが、1900年代イギリスに植民地化される以前のナイジェリアの社会となるとちょっと想像がつかない。背景となっている村の日常風景をわからないまま読むという不思議な感覚があった。しかしあれやこれや村の出来事がくりひろげられるうちに、なあんだ我々と変わらない、自然とともに生きる古い農村の暮らしが見えるようになってきた。
主人公の父親はあまり働かず飲んで歌って毎日を過ごす男で、やはりこんな男はどの世界にもいるもんだ。その反動で主人公は克己心あふれた強気ひとすじの男性主義者で、優しい態度やこころの弱い部分を全否定して闘争的に生きていく。早晩悲劇を迎える偏った人格で、なかなかつらいものがある。
物語の最後の方でようやくイギリス人宣教師を先頭にした植民地化政策に古い村が壊されていくが、それまでは冠婚葬祭や争いごとや裁判やさまざまな精霊と迷信が支配する伝統的な村の暮らしが描かれていく。万物に神が宿る世界。最後になっていよいよ世界史が動き出す。
PR
COMMENT