漫画家まどの一哉ブログ
「奴婢訓」 スウィフト
「奴婢訓」
スウィフト 作
(岩波文庫・深町弘三 訳)
18世紀、ご主人様にお仕えする執事はじめ召使の処世術を、アイロニーたっぷりにこれでもかと連ねた奇書。
さすがガリバー旅行記の作者が書きそうな風刺譚。スウィフトという人は自身も従僕を務めながら牧師を目指し、絶頂期は稀代の論客として一世を風靡した人。よって下僕の務め方を事細かく解説することもできる。
召使頭・料理人・従僕・馭者・別当・小間使・女中…その他各下僕たちが、いかに主人や奥様の目を盗んで労力を省き、自由な時間を捻出し、うまい具合に酒や料理のおこぼれにありつくかの手練手管が、果てることなく書き連ねられるが、そのあまりにしみったれた有様に感心する。読んでいてすごく楽しいかというと微苦笑くらいだ。われわれは18世紀の下僕たちの暮らしをよく知らないので、その点勉強にはなるかも。
併載の「アイルランドの貧家の子女がその両親ならびに祖国にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案」は、冗談とはいえカニバリズムなので、あまり良い気はしなかった。
PR