漫画家まどの一哉ブログ
読書
「単純な脳、複雑な私」 池谷裕二 著
以前は素人向けの脳科学読み物をいくつか読んで喜んでいた。この著者のヒット作である「進化しすぎた脳」も楽しく読んだ。その続編ともいうべき読み物で、前作と同じく中高校生への解りやすい講義録といった内容。これなら自分でもついていけるかも?
その前作でも驚いたのだが、なんといっても我々が意識するより先に脳が行動の準備をしているという点が興味深い。例えば手を動かそうと意識する0.5~1秒前に、脳の運動前野ではその準備が始まっている。われわれが意識するのはその後。しかも手が動いたという感覚が脳に生まれたその後で、動けという命令が出される。では自分たちの自由意志っていったいなんなんだ?という疑問が生じるのも当然のことで、この本も後半、この問題に踏み込んでからが面白い。どうやら脳は生存のために未来を先取りしているようで、我々が意識している時間の感覚は、無意識の世界ではちょっと違うようだ。そして自由意志とは結局脳の準備したことを行わない、否定というかたちにあるという結論も驚き。
また脳が揺らぎ(ノイズ)を持っていることによって、環境にフレキシブルに対応できるしくみも、人生がノイジーで揺らいでいる自分のような者にとってはなぐさめとなるオハナシだった(笑)。生命の複雑な行動も、案外簡単な法則がもたらしている結果であるのも、むかし巷間に話題となった複雑系の復習だ。ここでは創発というしくみが勉強できるぞ。と、まあ素人が思いつく感想なんてこんなもんで、実際はよく分かっていないのであります。
※ここで紹介されている不思議な実験が、ブルーバックスのサイトで動画で確認できて愉快愉快。http://bookclub.kodansha.co.jp/books/bluebacks/infopage/brain.html