漫画家まどの一哉ブログ
「人間ぎらい」 モリエール
「人間ぎらい」
モリエール 作
(新潮文庫・内藤濯 訳)
貴族社会ではお定まりの外交辞令を否定し、誰に対しても本音で語ろうとする青年。方や憧れの未亡人は八方美人の冷徹な社交家。無謀な青年の恋の行く末は?
色恋以外にすることのない有閑階級の誰が愛を勝ち得るかの話なので、基本的に面白くなさそうだがこれが面白い。
まず主人公青年が本人に面と向かって「あなたの詩はヘタクソ」と言うことで引き起こす軋轢。常に本音で語ることによって身動きが取れなくなっていく。すべてを丸く治める友人との対比も効果的で、無駄な強がりというものがよくわかる。
次に男性陣の憧れの的。美しい未亡人が相手によって誰彼をほめそやしたり貶めたり、また女性同士の間ではかなり辛辣な毒舌合戦があったり、裏表を使い分けて社交界を泳ぎ切るワザ。本音が見えないのが主人公と対照的だ。
そうやって人間社会のいやらしさを描けるのも、社交辞令が異常に発達している貴族社会ならではであって、庶民の世界、あるいは商業の世界ではここまで戯画的なほど極端ではないと思う。
ところどころコミカルなやり取りもあって楽しくできています。
PR