漫画家まどの一哉ブログ
「短くて恐ろしいフィルの時代」 ジョージ・ソーンダーズ
「短くて恐ろしいフィルの時代」
ジョージ・ソーンダーズ 作
(河出文庫・岸本佐知子 訳)
横暴な君主として国内を支配するに至った男フィル。国境を接する小国に対して残酷な侵害を開始するが…。すべてありえない国土とキャラクターで描かれた戯画的寓意小説。
被害にあう小国はほんの数人しか住めないくらいの概念的な国土面積。また登場人物は各種機械部品をつなぎ合わせたような人間とは懸け離れた謎の存在。このようにかなり奇矯な、とりつきにくい設定で描かれている。
そのこと自体は別に悪くはないが、独裁者として成り上がっていくフィルや追従する役人。臆病な被害国民など、その風刺・諧謔はわかりやすいもので、ここまでの奇怪な設定でなくふつうに人間の人物を出しても充分成り立つ内容だと思う。
その証拠にいちばん面白いのは老いた大統領で、その耄碌ぶりがリアルで悲しく、こんな老人を抱える家庭は世に星の数ほどあるかしらんと思いやる次第。
PR