漫画家まどの一哉ブログ
「ホモ・エコノミクス」ー利己的人間の思想史
「ホモ・エコノミクス」ー利己的人間の思想史
重田園枝 著
(ちくま新書)
科学たるべく経済学が中心に据えた概念ホモ・エコノミクス。新自由主義に侵された昨今、ホモ・エコノミクスが経済学を超えて我々の日常を侵食するまでを広範な社会思想史から分析する。
世の中知らないうちにあらゆる局面で資本の(商業の)言葉が大手を振って歩き、なにもかもが金(カネ)の話になっていくことを、なんとなく憂いていてこの書を手に取った。
著者は政治思想史の専門家(著者のちくま新書過去2作は読了済)であるから、経済学がホモ・エコノミクスを採用・発展させていくまでを多くの経済学の先人の歩みをたどって紹介してくれるが、素人としてはその辺は飛ばし読みした。
三部に分かれる本書のうち、やはり馴染めるのは第三部「ホモ・エコノミクスの席捲」であって、たとえば大学教育をすぐさま利益に結びつく成果を目標とし、費用対効果で査定していくことの不毛さや、農業を短いスパンで利益を求めた結果、地球環境の大きなサイクルを破壊してしまう愚かさなど、ふだん見聞きする現代社会に浸透してしまったホモ・エコノミクスの災いをあらためて確認することができる。また世界的に広がる「政治嫌い」の所以についても、ホモ・エコノミクスの結果であるらしく、興味深い所見を得た。
PR