漫画家まどの一哉ブログ
「ピノッキオの冒険」 カルロ・コッローディ
「ピノッキオの冒険」
カルロ・コッローディ 作
(光文社古典新訳文庫・大岡玲 訳)
19世紀イタリアで書かれた児童文学の古典。ディズニーアニメとは違った悪童人形の物語。
大筋ではディズニーアニメと同じなのだが、違うのはピノッキオが無垢な少年ではなく欲望のかたまりで、けっこう乱暴者なところだろうか。しかしそれは未だ躾けられない子供の姿であり、自然な人間の姿なのかもしれない。彼は悪たれ小僧と言うよりは、悪巧みなどできない無思慮・無分別な存在である。
失敗を重ねては周りの大人やコオロギの幽霊になんども諭され、そのたびに心を入れ替えてまじめに勉強に励んでみたりするが、それが続くのは失敗に心が傷んでいる間だけで、あたらしい欲望に触れるとたちどころに誘惑に負けてしまう。つまりこの種の人間は言いつけを守ろうとするが、機械的に遵守しているだけでその意味がわかっていない。自身を対象化して見ることができていないようだ。
キツネとネコのコンビや子供の国の噂話に騙されて悲惨な目に合うが、そのたびに自分が大人のいいつけを守らなかったためと泣いて反省する。しかしピノッキオは肝心な点をいつも学習していない。それは世の中には欲望につけこみ、悪意をもって人を騙そうとする人間がいっぱいいるということである。ここが分かっていれば自分の欲望にも冷静になれたのにね。
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